不動産の所有者が認知症の場合、売却はできる?できない?


この記事のハイライト
●登記名義人が認知症の場合、不動産の売却はできるのか?
●任意後見人と成年後見人の違い
●家族信託とは?


最近、お客様からの売却のご相談をいただく中で、登記名義人が認知症を患っているというケースが非常に多くなりました。
果たしてその場合、ご親族の方が売却をしてしまって問題がないのか?
それとも売却することができないのか?
だとすれば、売却は相続するまで待ち続けなくてはいけないのか?
皆様の疑問は尽きません。
今後も増えていくことが予想されますので、ここでご紹介いたします。


登記名義人以外の方が不動産を売却することができる?



一定の手続きを踏めば売却できる場合もありますが、自由に売却することはできません。
当然ながら不動産は大切な財産です。
その財産を例え親族と言っても、本人以外が自由に売却できてしまったら大変です。
テレビドラマではありませんが、財産をめぐって親族の意見が対立することも実際にあり得ます。
ですので、不動産は所有者=登記名義人が売却する意思表示を行わないと、他人へ名義変更することができない仕組みになっています。

専門的な表現をすると、民法第3条2項「法律行為の当事者が意思表示をしたときに意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効とする。」と明記されています。
つまり認知症のように、本人が自分の損得を理解できない状態で不動産の売却ができてしまうと、悪意を持った相手方に不当に低い代金で売買契約を締結させられる恐れがあるので、意思能力がない人が行った契約行為を無効にする決まりがあるのです。

では、認知症の人は不動産を売却が一切できないのか?
本人が金銭以外の財産を所有しているのに、現金化できないために貧しい生活をしなくてはいけないとなると、本人を守っているはずの法律が足かせとなってしまいます。
この状況を解決するため、法律では3つの手段が認められています。


①法廷後見人制度


ご紹介する3つの手段の中で、恐らく最も活用されている方法です。
本人が判断能力がなくなった後、家族などが家庭裁判所に申し立てをし後見人となる制度です。
不動産の売却という点にスポットをあてて説明をすると、最も重要なポイントは、後見人が自由に本人の所有する不動産を売却できないという点です。
例えば、本人が今まで住んでいたマンションや一戸建て住宅を売却して、入所する老人施設の費用にあてたいとしても、後見人の判断だけで勝手に売却することはできません。
家庭裁判所に「居住用不動産処分許可」の申し立てをし、許可が下りてから売却をすることになります。

一般的に法廷後見人の手続きを始めて認可されるまで約半年と言われています。
さらに、居住用不動産処分許可の認可がスムーズに進んでも約1ヵ月かかります。
さらに売買契約を締結して、引渡し(売買代金をもらえる日)がケースによって異なりますが、仮に2ヵ月かかったとします。
恐らくお金が必要になっているであろう状況の中、どれだけスムーズにいったとしても、手元にお金が入るまで半年以上かかってしまうという点を、ご家族の方には知っておいていただきたいのがポイントです。

それでも、ご本人に成り代わり、本人が毎日豊かに生活していける支援ができるわけですので、半年以上と聞いて途方に暮れる方もいらっしゃると思いますが、どうか前を向いて手続きを進めていただきたいというのが私からの切なる願いです。


②任意後見人制度


次に任意後見人制度について解説します。
任意後見人制度は、将来の認知能力の低下に備えて、本人の意思によって後見者を選出し、任意後見契約を公正証書によって締結します。
重要なのは、本人の意思表示ができるときに任命することです。
この人なら自分の不利益なことをしないであろうと判断できるときに任命しますので、任意後見人が本人に代わって行える範囲は広くなります。

法定後見人が家庭裁判所で手続きを行うのに対し、任意後見人は公正証書による契約で受任者に与える権限を締結します。
その権限の中に不動産の売却が含まれていれば、本人が認知症になった後、任意後見人の判断で売却することができるのが法廷後見人との大きな違いになります。
つまり、本人のためにお金が必要になった場合、最短で不動産を現金に換金することができるのです。

早めにこの手続きを行っておくことで、ご家族や身の回りの世話をしてくださる方の救いになるかもしれませんので、認知症の恐れを感じている方はご準備をお勧めいたします。
なお、任意後見人に後見を依頼するには、併せて任意後見監督人の選任も必要となります。
判断能力がなくなった後も、任意後見人が良識をもって本人のために財産管理をしているかのチェックする機能になります。
監督には一定の費用が発生するので、いつからスタートするのか注意をしておく必要があります。


③家族信託


最近、存在感を増してきているのが家族信託です。
本人の意思能力があるうちに、一定の権限を信託契約で取り交わすのが家族信託になります。
こちらも、意思能力があるうちというのがポイントです。
任意後見人との違いは、家庭裁判所の介在を必要とせず、受託者との間で信託契約で権限を決められるため、より当人同士の意向に沿った内容にすることが可能となります。
不動産の名義も、形式上、受託者の名義で登記されます。
当事者同士の契約なので監督人の選任は必要ありませんが、信託契約にはその道のプロに手続きを依頼することが一般的で、司法書士などに一定の手続き費用をお支払いする必要がありますのでご認識ください。
その代わり、任意後見監督人のように、その契約が継続する限り費用が発生し続けることがありません。
どちらを選ぶかは、その時の状況や、財産を託せる人がいるのかによっても変わってきます。


何事も事前の準備が大切!


どの方法を活用するにしても、一定の時間がかかることはご理解いただけたかと思います。
いざお金が必要となったときに困らないよう、事前にご準備を進めておくことが重要です。
そして、その準備ができるのは、不動産を所有しているご本人になります。
あとのお世話をしていただける方に極力負担を掛けたくないと、どなたも思うことでしょう。
まずはご自身の所有する不動産の価値を知り、売却したらいくらになるのか、売却するにはどの程度の時間が必要になるのかを知り、その上で、誰にいつのタイミングで託していくのが良いのかシミュレーションしておくことをお勧めします。
当店では土地、一戸建て、マンションの無料査定を行っております。合わせて、司法書士、税理士と提携して、専門的なご相談に対応していただけますので、お気軽にお問い合わせください。


まとめ


・登記名義人が認知症になっても売却できる方法がある。
・事前に準備を進めることで、ご本人と、お世話をしてもらう方の不安や負担を減らすことができる。
・ご自身でできる手続きと、専門家の手助けが必要な手続きがある。



\お気軽にご相談ください!/

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