不動産を家族に渡すときの贈与と売却どちらが得か完全ガイド
生前贈与・親子間売買・相続後売却の3パターンで比較する税負担の整理術
【この記事のポイント】
不動産を家族に渡すなら、贈与税と譲渡所得税・相続税を比較し、「トータル税負担」と「将来の売却・活用計画」をセットで考えることが重要です。
不動産売却で「贈与」と「売却」は何が違う?
結論として、贈与と売却の違いは「お金の動き」と「課税の対象」にあります。
贈与は無償またはほぼ無償で財産をあげる行為で、受け取る側に贈与税がかかりますが、売却は対価と引き換えに財産を渡す行為で、売る側に譲渡所得税がかかります。
同じ不動産でも、どちらの方法を選ぶかで税金の種類・税率・支払う人が大きく変わる点が、最初に押さえるべきポイントです。
贈与とは?基本の仕組みと税金
一言で言うと、贈与とは「お金をもらわずに不動産の名義を移す方法」です。
贈与税には年間110万円の基礎控除があり、この金額を超える部分に対して10〜55%の累進税率が適用されます。
不動産のように評価額が数千万円になると、控除後の課税価格に高い税率がかかり、1,000万円前後の贈与税になるケースも珍しくありません。
売却(売買)とは?譲渡所得税の考え方
売却は、買主から対価を受け取り、不動産の所有権を移転する取引です。
不動産売却で課税されるのは「売却価格 −(取得費+譲渡費用)」で計算される譲渡所得であり、この利益部分に対して所得税・住民税がかかります。
所有期間5年超なら長期譲渡として約20%、5年以下なら短期譲渡として約40%の税率が適用されるため、いつ取得した不動産かが税額に大きく影響します。
同じ家族間でも「みなし贈与」に注意が必要
最も大事なのは、家族間の売買が「安すぎる価格」で行われると、その差額部分が贈与とみなされることです。
たとえば、固定資産税評価額が3,000万円の不動産を1,000万円で親子間売買した場合、2,000万円分が贈与と判断されるリスクがあります。
この「みなし贈与」は本来避けたい事態のため、適正な時価や税務署が問題視しない範囲での価格設定が重要になります。
贈与と売却どちらが得?税金・費用をケース別に比較
結論として、多くの一般的なケースでは「高額不動産の一括生前贈与」よりも、「相続+売却」または「適正価格での親子間売買+控除の活用」のほうが税額を抑えやすい傾向があります。
ただし、将来の値上がり・家族の状況・ローン残債などによっては、あえて贈与を選ぶメリットもあるため、シミュレーションが欠かせません。
ここでは、代表的な3つのパターンを想定し、税金・費用の特徴を整理します。
パターン①:親が子へ生前贈与して、子が将来売却する場合
一言で言うと、「贈与+将来売却」は、贈与税と譲渡所得税の二段階で税負担が発生するパターンです。
例えば、評価額3,000万円のマンションを子へ贈与すると、基礎控除110万円を差し引いた2,890万円に対して45〜50%前後の贈与税率がかかり、1,000万円超の税額になる事例が紹介されています。
その後、子が売却するときには、取得費は「贈与時の評価額」となり、そこから売却価格との差額に対する譲渡所得税も別途かかる点が押さえるべきポイントです。
パターン②:親子間売買で子が購入し、その後売却する場合
このパターンでは、親は売却者として譲渡所得税の対象となり、子は購入者として不動産取得税と登録免許税が発生します。
長期所有の不動産であれば、親の譲渡所得は20.315%程度の税率で済み、子は購入価格を取得費として将来の売却時に控除できるため、贈与税を支払うよりトータルで軽くなるケースが多く見られます。
ただし、市場価格より極端に安い価格を設定すると差額部分が贈与とみなされるおそれがあるため、近隣の売買事例や不動産会社の査定を参考に、妥当な価格帯を設定することが重要です。
パターン③:親が亡くなったあとに相続してから売却する場合
相続の場合、相続時点での不動産評価額に基づき相続税が課されますが、相続税が発生しない範囲のご家庭も多く、贈与税のような高率課税を避けやすい特徴があります。
相続した不動産を売却する際は、相続時の評価額を基準に取得費を見積もり、売却益に対して譲渡所得税が課税されますが、所有期間の通算により長期譲渡の適用が受けられることもあります。
また、自宅として使っていた不動産なら、3,000万円特別控除や軽減税率の特例が利用できる場合もあり、生前贈与より有利になることが少なくありません。
贈与と売却の税金・費用を具体的にシミュレーション
結論から言うと、評価額が大きい不動産ほど、贈与と売却で税額の差が広がります。
ここでは、「評価額3,000万円の不動産」を前提に、ざっくりとしたイメージを持っていただくためのシミュレーション例を紹介します。
実際の金額は取得費・居住年数・その他の資産状況で変動するため、最終判断は税理士等への相談を前提にしてください。
ケース1:3,000万円の不動産を一括生前贈与
- 評価額:3,000万円
- 基礎控除:110万円
- 課税価格:2,890万円
- 税率:45〜50%帯
このような条件では、贈与税だけで約1,000〜1,200万円程度になる例が専門記事で解説されています。
さらに登録免許税(評価額の2%)や不動産取得税(3%)も受贈者側に発生するため、現金負担がかなり大きくなる点がネックです。
ケース2:親子間売買で3,000万円で売却する場合
親が取得した時の価格を1,500万円、売却価格を3,000万円、長期所有(5年超)と仮定します。
- 譲渡所得:3,000万円 −(1,500万円+諸費用)≒1,500万円
- 税率:20.315%(長期譲渡)
この場合、譲渡所得税+住民税は概ね300万円前後となり、生前贈与の1,000万円超と比べると負担差が大きいことが分かります。
一方で、子には登録免許税(2%)や不動産取得税(3%)が発生しますが、それでも贈与税を支払うよりトータル負担が抑えられるケースが一般的です。
ケース3:相続後に売却する場合のイメージ
相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」であり、この範囲内なら相続税がかからないことも多くあります。
基礎控除内に収まる場合、相続時点での評価額3,000万円の不動産については、相続税の負担は生じず、その後の売却時に譲渡所得税だけを考えればよい構造です。
結果的に、「相続+売却」は高額な贈与税を回避しながら資産を承継できる選択肢となりやすい点が特徴です。
よくある質問
Q1. 不動産を贈与と売却どちらにするか、税金だけで選ぶなら?
A1. 税金だけで見れば、多くは「相続や売却」のほうが有利で、高額な一括生前贈与は負担が大きくなりがちです。
Q2. 親子間売買なら贈与税はかからない?
A2. 適正な時価で売買すれば贈与税はかかりませんが、相場より安くすると差額が贈与とみなされる可能性があります。
Q3. 不動産の贈与税はどのくらい高い?
A3. 基礎控除110万円を超えた部分に10〜55%の累進税率がかかり、評価額が数千万円だと1,000万円超の税額になることもあります。
Q4. 相続と贈与どちらがトータルで得になりやすい?
A4. 相続税には基礎控除があり、贈与税より税率も抑えられるため、一般的には相続のほうがトータル負担を抑えやすい傾向があります。
Q5. 自宅を子どもに渡すなら、いつがベストタイミング?
A5. 自宅は3,000万円特別控除など売却時の特例が使えるため、「自分が住まなくなってから売却して現金を分ける」選択肢も検討する価値があります。
Q6. 贈与後すぐに売却すると税金は不利になる?
A6. 贈与時に高い贈与税を支払い、その後の売却でも譲渡所得税がかかるため、短期間での「贈与+売却」は税負担が重くなりやすいです。
Q7. どのパターンが自分に一番合うか簡単に判断する方法は?
A7. 不動産の評価額、ローン残高、家族の将来の住まい方を整理し、税理士と不動産会社に贈与・売却・相続それぞれの税額シミュレーションを依頼するのが確実です。
今日のおさらい:要点3つ
- 不動産の贈与税は最大55%と高く、安易な一括贈与は要注意である
- 売却(親子間売買)は贈与税を避けられるが、譲渡所得税や購入側の取得税が発生する
- 相続も含めて、「贈与+売却」「売却のみ」「相続+売却」の3パターンを比較するのが最も合理的である
この記事の結論
不動産を家族に渡す場合、多くは「相続まで待つ」か「適正価格で親子間売買」が税負担を抑えやすい選択です。
高額不動産の一括生前贈与は、贈与税が10〜55%と重いため、税金面だけ見ると割高になりやすいです。
売却は、譲渡所得(売却益)に対して長期20.315%・短期39.63%の税率がかかり、所有期間5年超なら負担は抑えられます。
自宅として住んでいた不動産なら、3,000万円特別控除などの優遇を活用した売却が有利になるケースが多いです。
最終判断は「評価額」「ローン残債」「将来の住み方」「家族構成」を加味し、税理士・不動産会社にシミュレーションを依頼するのが安全です。
まとめ
不動産を家族に渡すとき、高額な一括生前贈与は贈与税が重く、税金だけ見ると不利になるケースが多いです。
親子間売買は贈与税を避けられますが、譲渡所得税や取得税が発生するため、適正な価格設定と事前シミュレーションが欠かせません。
相続は基礎控除や特例を活用しやすく、「相続+売却」がトータルで有利になるパターンも多く見られます。
自宅の場合は3,000万円特別控除などを踏まえ、「いつ・誰が・どう住むか」を含めたライフプランと一緒に検討することが重要です。
最終的な最適解はご家庭ごとに異なるため、春日井市など地域事情に詳しい不動産会社と税理士に相談し、贈与・売却・相続を比較したうえで決めることをおすすめします。


