不動産売却|名義変更と税金の関係|相続・贈与・親子間売買の違いガイド
"名義を変えれば得"は誤解|登録免許税・贈与税・譲渡所得税をまとめて試算する
【この記事のポイント】
- 不動産売却の税金は、「誰の名義で売るか」よりも「どう取得したか」によって決まり、名義変更に伴う贈与・相続・売買の有無で税務上の扱いが変わります。
- 売却前の名義変更では、「登録免許税」「(贈与なら)不動産取得税・贈与税」「売却時の譲渡所得税」がそれぞれ関係し、相続の場合は相続登記が必須、贈与の場合は評価額に応じて贈与税負担が重くなりやすいです。
- 「不動産売却|税金|名義変更」を考えるときに最も大事なのは、"名義変更そのもの"よりも、「名義を変える理由(相続・贈与・売買)と、その前後の売却計画」をセットで整理することです。
不動産売却と名義変更の基本ルールは?税金と登記の関係を整理
結論から言うと、不動産売却でまず押さえるべき基本ルールは、「売主の名義と登記名義が一致していなければ売れない」という点であり、その前提として相続・贈与・売買などの名義変更手続きが必要になるケースがあります。
不動産の売買契約が成立し、決済が終わった段階で行う「所有権移転登記」は、売主から買主への名義変更(登記)であり、これはすべての売却で必ず行います。
この記事で扱うのは、その前段階として「親名義→子名義」などに変えてから売る場合の話です。
相続物件の売却では「相続登記(名義変更)が必須」
「相続不動産は名義変更してからでないと売れません」。
相続した不動産を売却する場合、原則として、相続人名義への相続登記(名義変更)を完了させてから売却し、売却に伴う税金は「相続税」と「売却時の譲渡所得税」に分けて考えることが重要です。
相続登記では、次のような費用がかかりますが、これは「名義を正しくするためのコスト」であり、税金対策というより法的な必須手続きです。
- 登録免許税:固定資産税評価額×0.4%など(相続の場合)
- 司法書士報酬:5〜10万円程度が一般的
「相続の場合の名義変更は『売るための前提条件』であって、『節税手段』ではない」という理解が大切です。
生前に名義変更するときは「贈与」と「みなし贈与」に注意
結論として、「親が生きているうちに名義だけ子に変える」のは、税務上は贈与とみなされます。
不動産評価額に基づき、次のような税金が発生します。
- 贈与税:評価額 − 110万円(基礎控除)に対して累進税率
- 不動産取得税:原則3%(住宅用土地など軽減あり)
- 登録免許税:贈与による所有権移転登記は一般に評価額×2%など
計算例
評価額1,000万円の土地を親から子に無償で名義変更すると、
1,000万円 − 110万円 = 890万円 が贈与税の対象となり、税率に応じた贈与税がかかります。
さらに、親子間で相場より極端に安い金額で売買した場合、実質は贈与なのに「売買契約」として名義を変えた場合などは、「みなし贈与」として追加で贈与税が課税されるリスクもあります。
「名義を動かすだけのつもりが、思った以上に贈与税・取得税・登録免許税の負担を生む」ことがある点に要注意です。
名義変更そのものにも税金がかかる
最も大事なのは、「名義変更だけでも税金は発生する」という現実です。
名義変更にかかる主な税金・費用は、次のようなものです。
- 登録免許税:所有権移転登記の際に課税(原因が売買・贈与・相続で税率が変わる)
- 不動産取得税:贈与や売買で不動産を取得した側に課税(相続取得は非課税)
- 贈与税:贈与を受けた人に課税(評価額−基礎控除に税率適用)
- 譲渡所得税:売却時の利益に対して課税
「名義を変えるだけ」「一旦子名義にしてから売る」といった行為には、これらの税金が連動してきます。「名義変更=登録免許税+場合によっては不動産取得税・贈与税」という構図を理解しておく必要があります。
名義変更してから売るとき、税金面で得になるケース・損するケースは?
結論から言うと、「名義変更してから売ると得か損か」は、不動産の評価額・親子の年齢・相続税の有無・贈与税の負担・所有期間など、多くの要素で変わるため、一概にどちらが有利とは言えません。
ここでは、「相続前」「相続後」「親子間売買」の3パターンに分けて、代表的なパターンと注意点を整理します。
相続後に名義変更してから売るパターン:原則ケース
「相続したら、早めに名義変更してから売る」が基本です。
相続した不動産については、相続登記の義務化に伴い、相続から一定期間内の名義変更が求められ、名義変更を放置すると、売却の機会を逃す・数次相続で権利関係が複雑化する・共有者間トラブルのリスクが高まる、といった問題が指摘されています。
税金の観点では、名義変更時(相続登記)には登録免許税がかかるが、不動産取得税は相続なら非課税、売却時の譲渡所得税は被相続人の取得費と所有期間を引き継いで計算、というルールであり、相続登記をしたかどうかで税率が変わるわけではありません。
「相続の名義変更は"義務"であり、売却のための前提であって、損得で判断するものではない」と言えます。
生前贈与で名義変更してから売るパターン:慎重に検討すべき
結論として、「生前贈与→子名義で売却」は、税金面で不利になることも多いパターンです。
生前贈与で名義変更したうえで売却すると、贈与時には評価額に応じて贈与税+不動産取得税+登録免許税、売却時には子が売主として譲渡所得税、と、税金負担が二重・三重になりやすくなります。
一方、相続税の対象になるほどの大きな資産を持っていて生前贈与で相続財産を減らしておきたい、相続人が複数おり特定の子に不動産を事前に渡しておく必要がある、といった事情がある場合には、相続全体の設計の中で意味を持つケースもあります。
「税金だけを見ると生前贈与は重くなりがちで、相続・贈与・売却をトータルで見たうえで検討すべき」です。
親子間売買で名義変更してから売るパターン:みなし贈与に注意
最も大事なのは、「親子間での"安すぎる売買"は危険」という点です。
親名義の家を、相場よりかなり安い価格で子どもに売る、売買契約を交わして名義を移しその後に第三者へ売却する、といったスキームは、税務上「実質的な贈与があった」と見なされ、「みなし贈与」として贈与税の対象になる可能性があります。
また、親子間売買で名義を移した後に売る場合、親子のそれぞれに譲渡所得税・取得税・登録免許税が発生しうる、ローン利用や金融機関の審査が通常より厳しくなることもある、といった実務上のハードルも指摘されています。
「親子間売買で名義変更→売却」という二段構えは、税務・実務ともにリスクが高い選択肢です。
よくある質問
Q1. 不動産売却前に名義変更をすると、税金は安くなりますか?
A1. ケースによりますが、安くなるとは限りません。名義変更自体に登録免許税・不動産取得税・贈与税がかかる場合があり、トータルで税負担が増える可能性があるためです。
Q2. 相続した不動産は、名義変更しないと売れませんか?
A2. 売却には名義変更が必要です。売主と登記名義人が一致していないと所有権移転登記ができず、法的に売買を完了できないためです。
Q3. 親から子に名義変更するだけでも、贈与税はかかりますか?
A3. 評価額と関係します。不動産評価額から110万円の基礎控除を引いた金額に応じて贈与税が課税されるためです。
Q4. 名義変更にかかる登録免許税は、いくらくらいですか?
A4. 原因によって異なります。売買・贈与・相続など登記原因によって税率が異なり、相続は0.4%、贈与・売買は2%などと定められているためです。
Q5. 名義変更せずに、親名義のまま子どもが売却することはできますか?
A5. 原則できません。売却契約の当事者と登記名義人が一致していないと、所有権移転登記ができないためです。
Q6. 名義変更した後に売る場合、所有期間のカウントはどうなりますか?
A6. 取得原因によって異なります。相続・贈与では被相続人・贈与者の取得日から通算、親子間売買では買主自身の取得日からカウントするためです。
Q7. 名義変更と同時に売却する"相続登記省略スキーム"は可能ですか?
A7. 実務上は一旦相続人に名義変更してから買主へ移すのが原則です。相続人を経由せずに直接名義を書き換えることは登記実務上認められず、相続人名義への相続登記が前提となるためです。
今日のおさらい:要点3つ
- 相続した不動産を売る場合は、「相続登記(名義変更)をしてから売却する」のが原則で、税金は相続税と売却時の譲渡所得税に分けて考えます。
- 生前に親から子へ名義変更する場合は、評価額から基礎控除を差し引いた金額に贈与税がかかり、相場より極端に安い"名義変更のための売買"も「みなし贈与」とされるリスクがあります。
- 結論として、「名義変更してから売った方が得かどうか」はケースによって異なり、登録免許税・不動産取得税・贈与税・譲渡所得税をトータルで試算したうえで判断する必要があります。
この記事の結論
不動産を売る前に名義変更すると、相続なら"登記が前提"で税負担は原則変わらず、生前贈与や低額売買なら「登録免許税+不動産取得税+贈与税」が追加で発生し、結果的にトータルの税金が増える可能性があります。
「名義変更=税金がお得になる」わけではありません。
売却時の譲渡所得税は、あくまで「売却価格 −(取得費+譲渡費用) − 特別控除」に所有期間別の税率をかけて計算され、名義変更そのものは税率を直接変えませんが、贈与や売買を伴う名義変更は取得費・所有期間・贈与税に影響を与えます。
名義変更を検討する場合は、「相続で名義を移すのか」「生前贈与で名義を移すのか」「親子間売買にするのか」で税務上の結果がまったく違うため、事前に専門家とシミュレーションすることが不可欠です。
まとめ
不動産売却で名義変更してから売る場合の結論は、「相続なら相続登記が前提で税率は原則変わらず、生前贈与や親子間売買による名義変更は贈与税・不動産取得税・登録免許税を追加で発生させ、結果として税負担を増やすリスクがある」ということです。
名義変更そのものは税率を下げる魔法ではなく、「正しい所有者を登記簿に反映するための手続き」であり、「不動産売却|税金|名義変更」に関する判断は、相続・贈与・売買の違いと、それぞれの税金をトータルで比較したうえで下す必要があります。
「名義変更後の売却は得?損?——不動産売却前に名義を動かすかどうかは、感覚ではなく、"どの税金がいくら増減するか"を専門家と一緒に試算してから決めること」が、税務上のリスクを避けつつベストな選択をするためのもっとも堅実な方法です。


